
広島県庄原市総領町の伊達治男さん宅に到着して、真っ先に目に飛び込むのは可憐に咲くほんとに”たくさんのカタクリの花たち”。家の脇の山の斜面一面に広がるカタクリの花の群生は、まさに圧巻です!
個人のお宅の庭を期間限定で公開し、誰でも気軽に見学できるイベント「庄原さとやまオープンガーデン2015春」(しょうばら花会議主催)。現在、公開されているお庭の1つ、伊達さんのお庭(カタクリの庭)です。


200㎡の広さの山の斜面に、カタクリの花をきれいに咲かせるため伊達さんは、年に3回の草刈りを10年間欠かしたことがないそうです。すごい!
カタクリも、以前紹介したセツブンソウやフクジュソウのように、人間が草刈りをしないと雑草に負けてしまい、どんどん数を減らしてしまう貴重な山野草。花が咲くまでに7年もかかるそうです。
草刈りをして環境を整備し、守ることでカタクリにとって理想の土地となり、可憐な花をたくさん咲かせることができます。
・・・と、書くだけなら簡単なのですが・・・見てください! この急斜面!


どうやってここの草を刈るんだろう?と思うくらいの急な地形。
見学していた人から「どうやってここの草刈りをしているんですか?」と質問され、伊達さんは「上から眺めると急だなあと思うけど、いざ、草を刈り始めるとあんまり急だとは感じないんですよ。」と、笑顔で答えていました。
カタクリの花への伊達さんの深い愛情を感じます。

伊達さんという強力なパートナーを持つカタクリの花たちは、理想の土地で安心してどんどん仲間を増やすことができる幸せな花。
そしてその結果、可憐に咲くカタクリの花をこんなにたくさん愛でることができるのは、もっと幸せですね。
【カタクリ】
ユリ科。早春、地上に一対の葉を出し、その間に細長い花柄が伸び、その頂に淡紫色の花を一個、下向きにつける。7~8年の1枚葉の時期を経た後、2枚葉の個体となりやっと開花する。
葉は柄が長く狭卵形もしくは楕円形で。表面は淡緑色で褐紫色の斑紋がある。
立夏のころになると地上部は消え、翌年の春まで休暇に入る。
カタクリは、古くから人々に親しまれている早春の花で、万葉集(巻十九)で大伴家持(おおとものやかもち)がその花を詠んでいます。
「もののふの 八十(やそ)をとめらが くみ乱(まが)ふ 寺井の上の 堅香子(かたかご)の花」
この中で詠まれた堅香子(かたかご)がカタクリの古名といわれています。
冬の長い雪国で、春の訪れを喜ぶ乙女とカタクリの花の可憐さを詠んでいるそうです。
カタクリの花のほかにも、ショウジョウバカマやアマナも花を咲かせていました。とてもかわいらしい花。



和紙の原料になるミツマタも咲いていました。

撮影日:2015年4月8日
参考文献:『四季の山野草』(緒方出版、1990年)
by RIE KIKKAWA
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