
今回の比婆郷土料理研究会は、スピンオフ企画第3弾!!
2年前に比婆郷土料理研究会で教わった「藁スボの山仕事べんとう」。比婆郷土料理研究家”比婆ん婆お富”こと小林富子さんの「この郷土料理だけはしっかり伝えたい」というレシピの中の1つです。
ということで、2017年7月2日(日)、伝統の味をしっかりと受け継ぐべく、再度山仕事べんとうづくりに挑戦!
そもそも、「山仕事べんとう」ってどんなお弁当?
そもそも山仕事べんとうとは・・・、比婆地方で昔、山仕事にでかけるときにもっていっていたというお弁当です。
藁スボに、山の葉で包んだおかずやおにぎりを詰めたお弁当で、すべて自然のものなので食べた後は、そのまま山に捨てて(?)帰ったというお弁当。
それぞれのおかずを包む葉の種類も、決まりがあったそうです。
今回、藁スボに詰めるおかずは・・・。
・山菜や高野豆腐、根菜の煮しめ
・焼き魚(塩サバか塩ジャケ)
・ちしゃもみ
・お漬物
・大型のおむすび(味噌をつけて焼きおむすびに)
それに、そのままかぶりと食べられる水分の多い野菜やくだものも。今回はよーく冷やしたトマトを準備。


これまで何度も作ってきたレシピばかりで、それぞれメンバーも順調にとりかかっていたのですが・・・。包丁で材料を切り始めたところで、さっそく小林さんから、一言「なばえ切りで!大きにで!(斜め切りで、表面積を大きく)」。
そうでした、比婆郷土料理の大原則を忘れていました! というわけで、薄めの斜め切りで材料を切り揃えます。
昔は、ニンジンやゴボウ、高野豆腐などは、ななめに切ってできるだけ表面積を大きく見せることで、少ない材料でも見た目で満足させるよう工夫をしていたそうです。
昔の近所づきあいの見栄の張り合いかっ?・・・。

できあがったおかずを、さっそくそれぞれの葉っぱで包んでいきます。
煮しめはきれいに盛り付けて「ギボウシ」の葉で。


くさぎなの炒り煮は「クズ」の葉、焼き魚は「ほう」の葉で。
ちしゃもみは「フキ」の葉でそれぞれ包んでいきます。



漬物をクマ笹でくるくるっと巻いて、焼きむずびに添えてそれを一緒に竹の皮で包みます。
笹の葉やほうの葉は殺菌作用があるそうで、先人の知恵ですね。

ひとつにまとめて、藁スボに詰めて「山しごとべんとう」のできあがり!昔は、これを山仕事にもっていっていたそうです。

山でこのおべんとうを食べるときの箸は現地調達です。クロモジやミツバウツギの枝を折って箸にしていたそうです。特に、ミツバウツギは、中が空洞でポキッと枝を折りやすいので、比婆地方では”ハシギ(箸木)”と呼ばれていたそう。
また、お茶は野草茶で、クマ笹、木イチゴ、ハブソウ、ドクダミなど3種類以上をブレンドして作っていたそうです。

藁スボをなってお弁当箱をつくって、山に葉っぱを取りに行っておかずをその葉で包んで詰める・・・。今では、ものすごく手間のかかるこの「山仕事べんとう」。
でも、誰も作らなくなったらそれで郷土料理も忘れられたものに・・・。
手間はかかるけど、つくること自体とても楽しめる郷土料理は、実際つくって味わうと、意外な発見と驚きの連続です。
「いま、伝えよう。大地の恵みとむかしの人の知恵と技を!」とは、小林さんの今日のひとこと。

written by RIE KIKKAWA